「何も考えないで書く」

 昨日の「ラジオ深夜便」の「書きたい、書きたくない」のコーナー、「断捨離」の本でベストセラーになったという山下さんがゲストだった。

 はじまりはブログで、朝晩の二回、毎日更新を続けたという。
 それを三年も続けた。
「ネタに困ったことはないですか?」という問いに、「ないですね」
「書くのがつらいと思ったことは?」にも、「ないんですよね」

「とにかく伝えたい。この一心でした」というようなことだった。
 われわれは、プラスばかりで溢れてしまっている。マイナスになった方がいい── とは言っていなかったが、捨てるということは、ゼロに近い状態に自分の生きる環境を整えましょう、というふうに聞こえた。

「もう、勢いで書いているから、ブログは誤字脱字ばっかりでしたよ。絶対読み返しませんし」とも。
 そんな「勢い」で書いて行くうちに、今や世界中に翻訳され、山下さんの「断捨離」の本は大ベストセラーになっているらしい。

「伝えなくちゃ」という一心。
 書きたい、書きたくないどころの話ではなく、「書かなきゃ」と自然にペン(カーソルか)がどんどん進み、書くうちにどんどん「溢れてくる」らしい。

 ほんとに自然に書いているから、苦しいと思ったこともないという。
 そして本になり、文を見たりした時に、「コレ、ほんとに私が書いたの?」となるらしい。

 いわゆる「ゾーン」に入っているというか、天から何か使命を受けた人間が、自分ではなくなってその「使命」のままにペンを走らせる、というような情態と想像する。

 そしてそれはどこまでも自然で、ムリがなく、まして「自分が自分が」という顕示欲もなく、あくまでも「人間にとって必要なこと」を書くという、もはや忘我のままに書き続けた、と言えるだろう。

 これこそが「書く」、人様にお見せするにふさわしい、書く者のあり方のように思える。
 思考など、ジャマなのだ。
「書きたいことを書く」「書かざるをえないことを書く」。

 そう、それでいいのだ。
 何も考えないで書くのがいい。
 実際、でないと、朝晩の二回、更新を続けるなんて(三年も!)できなかったろう。

 しかし、何も考えないで書くなんて、ぼくにはできない。