自転車で10分ちょっと行けば、ぞろぞろと人が歩道橋を渡っていた。
夜店が並び、浴衣姿のお嬢さんが目を引く。
ドーン、ドーン、と花火が打ちあがる。
川の上では、「手筒花火」が。
舟の上で男が花火を抱え持ちながら、降りかかる火の粉に耐えていた。
空を見ると、また花火。
ひとつ終わって煙が風に流された時、なんとなくそのまま見ていたら、ぽっかりお月さんがいた。
半分顔を隠していたが、いい月だった。
派手な花火がまた打ちあがる時も、その月を見ていた。ちょうど、打ちあがる花火の横にいるのだ。
月は、ただ、そこにいるだけだった。
しかし、なんだか、とてもよかった。花火ではなく、ただそこにいるだけの、月が。
(何を見に行ったのかね?)