人間とは、精神である。

 と、キルケゴールは云ったそうな。

 精神とは何か。形、ないもの。いわば、気持ち、心、気分、の類い。
 つまり、自己を形成するもの。
 自己とは何か? 形ないものを、現実に表現しているもの。言葉であり、行動。?

 おさまりたい。
 形ないもの=自己を、現実の枠組みにおさめることで、まるで形となるような自己。
 ハミ出したい。
 自分は、そんなもんじゃないと、せっかくおさめても、欲望のあおり。

 絶望せよ、と椎名麟三は云う。
 絶望とは、現実である。現実とは、真実である。と。
 1本の木を、ただ、描写するだけでは、美ではない。

 そこに、表現者の絶望が描かれないと、美ではない、と。
 それは、現実を、真実を見るということ。
 美しいものを希求できるのは、現実、つまり絶望を見ることができて、感じることができて、そこから始まるということ。

 美は、表現、か。

 美しいものは、いいもんな。絶望が、あってくれてこそ。

 絶望することを、避けるな。積極的に、絶望しよう。
 そんな気持ちにさせてくれる、椎名麟三の言葉たち。
 まるで、ありがたい。勇気を、もらえる。「積極的に、絶望しよう。」
 どんどん、絶望しよう。