ぼくと同じ「期間従業員」のGさんが、今日で期間満了。
しあさってから、もうGさんは職場にいない。
Gさんは、ぼくに仕事を教えてくれた人だった。
青森で、リンゴ農をやっていて、「兼業農家だよ」と笑っていた。
兼業とは、リンゴをつくるだけでは生計成り立たず、他に何か労働をするということなのだ。
月曜日から金曜日まで、Gさんは自宅近くの会社に勤めていたらしい。
「まぁ、リストラだよ」と、50歳のGさんは笑っていた、しかし20年間、月曜日から金曜日まで、会社に勤めながら、土曜・日曜はリンゴの世話をしていた。
つまり、休日なんか、無かったらしい。
働き者のGさんは、ぼくのいる職場でも、ほんとうに働き者だった。
休憩のチャイムが鳴っても、キリのいいところまでやろう、と自分で決めたことを重んじていた。一緒に働いていて、この人の仕事ぶりは、ほんとうに本物だった。
そうか、そうだよな、これが、働くってことなんだよな、と、ぼくはGさんを見ながら、いつも思っていた。
「いやぁ、オレが教えたことなんて、形だけだよ、カッコだけだよ」とGさんは笑ったが、ぼくが心底から感じていたのは、その「形」をつくる、Gさんという人間の中身の部分だった。
この人は、信じられる人間だと思った。ふだんは無口で、いつも何かハニカミながら物を言い、まっすぐな視線を、大きな目から放っていた。
なんとなく、ふたり、バス停で握手して別れた。