夜のこと

 出かける前に、夜のことを書いておこう。

 毎晩、ぼくは寝床にいると、死にたい、ああ、死にてえな、死ぬべきだ、死んだ方がいい、などとジュモンのように独り言ちている。

 これはもう習慣のようなもので、自分でも、また言ってらぁ、と思うのだ。

 だが、その時は本人、けっこう真剣である。そして、何があったというわけでもないのだ。

 いいことがあろうが、わるいことがあろうが、死にてえな、と思うことには変わらないのだ。これはもう、そういう性癖といっていい。

 生きたい、などと、思わなくても生きているから、せいぜい「死にたい」と思うことが、そう思えることが、まるで自由のように感じられる。

 まるで、唯一の自由のような。

 だから、いいな、とも感じられる。イキテイル、と思う。

 夜は、なかなかコドクみたいだ。昼間も、同じ自分なのだが。

 しかし、きっと、やっぱり、ありがたいものなのだと思う。

 このありがたさは… やはり生きているうちに感じていたい。