介護の仕事の頃(20)楽しかったけど、キツかった

 結局、3つの職場、特養で働いて── トータルで1年、働いた。短い。
 介護なら、そのスキルを覚えれば、自分がトシを取っても働けるだろう、と思っていた。が、結局その技術を覚える前に、中途半端に辞めてしまった。
 人間関係のせいにもできる。余裕のなかった職場のせいにもできる。
 でも、結局続けられなかった自分のせいで、他のせいじゃない。

 もう、あとは全部言い訳になる。
 イジメのような態度を取られたこともあるし(客観的に見て)、介護は基本的に女性が合っているとか、介護の現場では転職が当たり前みたいな空気とか、ぜんぶ言い訳になる。
 あれやこれやと、仕事をする前に「覚悟」を決めていたけれど、結局ダメだった。

 ただ、自分に合っている、と思った。あんなに笑って仕事をしたことはない。入居者さんに笑ってもらうと、自分もほんとに楽しくなった。
 でも、それでよかったのか、と、よく考える。なにも、楽しく過ごしてもらうことが、いい、というわけでもないのか、と。
 ただ排泄やお風呂、食事、掃除、やることをやるだけで、あとはスタッフとの人間関係にとにかく気をつけて、「仕事」だけに重きをおいてやればよかったのか、それが一番よかったんじゃないか、と。

 気持ち良くお風呂に入ってもらおうと、一緒に童謡を歌ったり、フロアにいるいろんな人と話をしたり、「つながる」ことが大好きだった。
 しかし、働く者どうしの人間関係が、あんなにキツいとは思わなかった。言い訳だ。
「グループホームが、かめさんはいいと思う」と先輩から言われ、退職後、そんな求人も探したが… 人間が、介護の現場で働く人間が、特に女性が、すっかり怖くなっている。
 ちょうどコロナが流行り出し、家に引き籠もり始め、もう三年が経つ。貯金と、家人のパートで繋いでいるけれど、この先どうなることやら。