老犬

 歩いていたら、その道に、犬がいた。
 茶色い、長毛のゴールデンレトリバー。
 座っていたのに、よろよろと立ち上がった。
 ぼくに気づいて、寄ってきた。

 首のあたりを撫でてやったら、すりすりとジーパンに頬擦りしてきてくれた。
 あら、甘えてるわ、と飼い主さんが笑って言った。
 老犬の、かわいい瞳。

 誰かと、カン違いしたのかな。
 老犬は、親しげな眼で、笑っているようにぼくを見た。

 一緒に、カン違いしたまま、
 余生、笑いあって送りたいと思った。