予想と願望のはざまで

 もうずいぶん書いた… アッちゅうまだ、いつまで続ける、こんな捌け口を? 愚にもつかぬとは言うまい、これでもけっこうがんばって書いてきた… 泣き言だ! 金魚すくいだ、自分で自分をすくって… ありがたいもんだった、ない頭しぼって文章にして。
 で今ふり返ってみりゃ、この数字…「生活」だけでゆうに700以上!書き過ぎじゃね? この調子じゃ、すぐ20000だ… ふり返ることは前を向くことにもなる! 「この調子」がずっと続くわけもなかろうに。
 いいじゃないか、べつに。今が積み重なっただけのこと。俺のせいじゃない、続けてきたのは自分だが。時間があった、時間のせいだ! 誰にだって時間がある…

 エッセイみたいなもんをいっぱい書いたら、今度はいっぱい小説を書いたれ、と思ってた。
 確認してみる… やっぱり日記みたいなもんばかりだ… 小説と呼べるものと言えば「日常と非日常の間に」「恋まみれ」「無名氏の一生」「小さなものたち」… 某投稿小説サイトの課題文学賞に応募した数点… たったこれだけ!

 整理してみる… 「婚前生活」は自信作だ、ラストが何か足りないが、よくやったと思う。「夜の記憶」も、老婆の口を借りて言いたいことを言った点で自信作だ。この二点は、だから課題文学応募作集に入れない。この二点は特別だ。
 あとは何だ、チャットノベル? ペシミスティック・サロンも自信作だ、やはり詰めが甘いが…。
 文学賞なんか糞くらえだ、セリーヌ流に言やあ。名誉? 勲章? 戦時下か、勲章なんて要らん! 負け惜しみじゃない、もともとそういう性質だった… 嘘だと思うなら、「胎動」をご覧あれ! 「かめさんが有名になってから言ってほしいですね」と言った当時の友達とのやりとりを! こいつはナントカ賞を取ったからすごいんだとか、そんなもんじゃないんだよ。

 … 何が言いたかったんだっけ? ああ、予想と願望についてだった… 忘れた、何が言いたかったか! 「『胎動』から」だって、ありゃもう19年前に書いていたもんだ、同じようなことを言っている! ブレないからって、それがいいわけじゃない… 何も変わってないってことだ。作家も、処女作を読みゃあその後こいつが何を書くかわかるっていう… 一定のレベル、水域ってのはある程度決まってる… それにそんな努力もしてこなかった! 賞が欲しいだの何だの、そんなことを想う自分とは何なんだ、そっちの方によっぽど関心があった! そりゃ欲しいと思ったことはあった、でもそれは単なる見映えのことだった、本気じゃなかったね、冷めてたね…

 つまり、今、足りているということだ。嘘じゃない、いつだって嘘なんか言ってこなかった、人様に対しては! おかげで人間関係も… 過ぎたことだ、今も過ぎてる、今で充分だ、あれこれ言ったところで、欲したところでキリがない! 足りている。
 《私》はこうしてできあがっている… よし! これをほんとにありがたいと思うよ。うまれてから、今までの。《私》の運命を順調に辿ってると思う。それがどんなであれ! 悲惨であれ不幸であれ幸せであれ、そりゃ人様の尺度だ。私は… いや、あんまりくどくど言うのはやめよう、今で充分である!
 いや、ほんとに! …と、ほんとにほんとに、と言いはじめると、どんどん空虚になってくる。ここで止めよう、今で充分、十全完全、ばっちし、よし、と!
 ほんとのほんとに。