去年の冬、歩道の真ん中で、倒れて亡くなっていた子猫を、通りすがりの若者とふたりで、弔ったようなことをした。
弔うといっても、私のマフラーを子猫に包み、道の端の空き地のような所に置いただけだったが…
だが、翌年の夏、その亡くなった子猫とそっくりの子猫を、川沿いの脇にある一軒家の玄関前で見たのだった。
廃品回収を営んでいると思しき家で、その玄関前には、鉄やら金属の、それらのゴミのような物が入った金網状のコンテナの下に、子猫たちと母猫の姿があった。
その子猫たちの中に、あの、ぼくのマフラーで包んだ子猫とそっくりの子がいた。
他の、3匹くらいの子猫は、急いでコンテナの下に隠れたのだが、その子は隠れずにぼくのことをじっと見ていたのだ。
ぼくの、全くの気のせいかもしれない。でも、感じたままに書けば、その子猫は、「あっ、あのときの、ヒト…?」というふうにぼくを見ていた。
ぼくは、「おまえ、あのときの、おまえか?」と感じながら見ていた。
子猫は、ぼくのことを思い出しているような、親し気な目に見えた。
「あのときは、ありがとう」、そんなことをいわれているような気がした。
しばらくその子猫と見つめあって、情けない話だが、ぼくは涙ぐんだ。
ぼくは連れと一緒に買い物帰りだったし、「またね」と声かけて、その場から離れたのだけれど、あの、亡くなった子猫が、生まれかわったのかなと思った。
ひとりで思っているだけだけれど、嬉しい「再会」のような気がした。