そのまんまについて

 ところで、私は笑うことが大好きである。
 笑っていると気持ちがいいからだ。
 一人でいる時は、そんなに笑っていない。
 人と話す時など、たいてい笑っている。

 軽薄とも思われかねないが、実際そうだろうから仕方ない。
 家人と話す時など、へらへらしている。
 だがしかし、笑いはほんとにいいのだ。

 プロ野球のDeNAの内野手に、柴田という選手がいるが、この人もけっこう笑っているらしい。
 試合に負けて、泣いたりしている。いい選手だと思う。
 この柴田選手は、チームにとって大きな存在らしい。

 いつも笑っているから、自然、まわりも明るくなるという。
 私のような人間は、柴田選手のようになれない。

 たとえば職場で、「あなたの笑いはほんとうに良い、笑顔がほんとうに素晴らしい」と実際に言われたこともあるけれど、そうすると何か「常に笑っていなければならない」ような、義務感に捕われてしまうのだ。

「職場が明るくなる」などと言われた暁には、もう自分が無くなって、まわりにばかり心が捕らわれてしまう。

 ほめられるのは、鳥肌がほんとに立つほど嬉しい。
 でも自分の場合、妙な方向に行ってしまう。

「声が素敵。声優さんみたい」と介護の職場で素敵な女性から言われたが(たまには自分がほめられたことも書いておこう)、それからその人と話す時、私は自分の声にやたら意識が行ってしまい、緊張するばかりになった。

 しかし、とにかく笑いはいい。私はかなり天然らしいので、人を笑わそうとすると、かえって笑ってもらえない。
 そのまんまでいいらしいのだが、そのまんまというのも、難しい。
 そのまんまを意識すると、まるでそのまんまでいられなくなるような気がする。

 人を笑わせたくて笑わせられる、そういう才能のある人はほんとうに凄いと思う。
 なかなか、そういう人間には、なれそうにない。