感情をコントロールすること。
これに長けた人は、人生の成功者に見える。
自身の心に占領されるのでなく、自身がその領主となること。
とてもじゃないが、大変なことだ。
そのような時があったとしても、また心は動く。
真っ暗闇になり、また明るみを見つけ、を繰り返す。
一定におさまることがない。
おさめることもできない。
ただ、見つめることができるだけ。
外的な何かをきっかけに、影響を受けて飛び跳ねる、この自由気ままなものを。
よく、見てみよう。
見つめられると、かれは弱い。
恥ずかしさにかこつけて、すぐ逃げようとする。
追いかけるまでもない。かれは、ここにいるのだから。
今度は、何が原因でそうなっているのかね。
途方もないことを訊くなよ?
途方もなく思えるなら、途方があるだろう。そこは、どこだったのかね。
そう、ここでいつもきみは止まってきた。
その先へ、だからその元へ、行こうとしなかった。
ともかくその先へ行こうとして、始めたのではなかったかね。
宙ぶらりんの状態を、脱するために、始めたのではなかったかね。
抽象的なことを、抽象のままではいけないと、抽象を突き詰める試みではなかったのかね。
責めないでくれよ?
とことん甘えたやつだ。
よろしい。甘えさせてやる。わたし以外に、おまえが甘える相手も、いなさそうだからな。
打ち明けられるかね? いや、きみは言語をもっているのかね。
わたしがあてがってやらないと、きみは啞同然だ。
とすると、わたしがきみに打ち明ける形になるね。本末転倒だ。
わたしは聞きたいのに。
おっと、本末を転倒させたのは、このわたしか。
わたしが、おまえを制しなければならないのだった。
そう決めたのは、わたしか? おまえか?
わたしはおまえだったのか? おまえはわたしだったのか?
ならば、なぜにこんな自問自答ができるのだ。おかしいではないか。
やはり、おまえはいる。おまえを、こまかく映したい。描写したい。
一定せず、不定形にころころ戯れているおまえ。
おまえは、わたしが形どろうとするから、いびつになるのか?
ああ、おまえをおまえのまま描けたら、どんなに気持ちがいいだろう!