その点と点が交戦する。── 無理に、でっちあげ、妄想と願望、平和だの人のためだの、果ては神のため、悪は滅びよとばかりに交じり合う…これも一つの交流だろう! 下卑た、唾棄すべき交流!
 国など、なくなれ。国なんか無くなったって、人間、生きれるよ。守るべきは、国なんかじゃない。個々の、いのち、一つ一つのいのちだよ。幼な子だって、知ってるよ。所有地なんか無いんだよ。所有、されてきたんだよ、この星に。地球に、宇宙に。
 何をやっとるのかね。地を壊し、海を汚し、空を黒くして。笑ってしまうね、怒りを通り越す。哀れでも愚かでもない。くり返してきた、この人間は。《知能》をもった、高尚な人間は!
 悲惨なもの、みじめなものだ、そのちっぽけなものは。自らつくり出す、でかい災厄を。その身にとってのみ、でかいとする災厄を。
 これに気づく人間は少ない。気づいた、わかったとて。この「とて」の先へ急ぐ。先を、先ばかりを急ぐ、命短し、恋せよ乙女とばかりに急ぐ。
 過去を、今を、おざなりにして。結果結果と、結果ばかりを。もう、結果は出ているのではないかね? これ以上、何を確認、何を希望、何を? 人間、生命、万物、もう、わかっていたことではないかね? そこにあることに、ここにあることに。
 また死体を踏み台にして、手を伸ばそうというのかね。上へ、上へ。上昇気流、穢れた気流に乗って! むくつけき空気だ!
 汚染されなきゃ、生きれぬか。願い下げだね。下へ、下へ! 頭は下げぬ、平身低頭、汚い売人の狡猾な薄ら笑い。唾棄唾棄唾棄、唾をかけるのも汚らわしい。上目遣いの黒衣の老婆、皺くちゃで眼だけがでかい。
 お前を哀れと思う。お前は哀れだ。高かったのかい、その喪服。
 お前は人間だ。俺も人間だ。同じだったね、同じだったね。
 何が上、何が下もなかったね。
 つくられたものに、踊らされたね。喜怒哀楽、楽しんだね。
 人間のつくった運命に。人造運命の狭い舞台で。
 そうでない運命があったのに。今もあるのに。
 こっちの下は大地だ。お前のつくった床下じゃないよ。
 人間のつくったもんじゃない。
 お前はまだそっちへ行こうとするのか。
 よろしい! 繰り返せ、繰り返せ。
 こっちはこっちで繰り返す。こっちの下は、大きいぞ。
 こっちもそっちも、大も小もない。
 お前の言語で、人間の言葉で言っているだけだ。
 伝わるものを、伝えようとして。
 伝えられぬものを、伝えようとして。
 思考も言語も、たいしたものではない。
 こんなことを書いたからとて、読まれまい。
 思考と言語、映像と画像、電波の交流に満ち満ちた世界だ!
 誰もが自分の楽しみを追う。承認願望を追い、時に人目につくことに精を出す!
 こっちの楽しみは、掘ることだ、この足元から、下へ、下へ。
 そいつはあっちへ突き抜ける、あっちにある空を見る、突き抜けて、ひょっこりと。
 違いはない、違いがない。
 空も海も、北も南も、古今東西、上下左右もなし!
 そのために、大地にキスをしたんだよ、あの人は。
 その足元に、その生命をのせた地に。
 這いつくばって、ひれ伏して。
 彼はこの地を抱きしめて。
 この地に彼は抱きしめられて。