その果てに

「なぜ生きるのがいいとされているのでしょう?」
「悲しいからじゃないかな、その人が死ぬのが」
「勝手なものですね、自分だって死ぬのに」
「自分にまだその可能性が少ないと思っているから、相手にそれを求めるんだ」
「生きろとか死ぬなとか、周りが言えるものではないのに」
「本人だって分からないからね。自分がいつ死ぬのか」

「意思に関わることではないんですね、生命のスタート、ストップは」
「大局的に見ればね。個々として見れば、意思、心の持ちようが大きいが」
「長生きするのがいいとされているのはどうしてでしょう?」
「せっかくの生命なんだから、ってことだろう」
「ぼくは、生きろ、なんて言われたら辛いですね」
「そりゃそうだ。辛いことの方が多いからね」

「死は、生きたご褒美だと思うんですよ」
「うん」
「それは向こうからやって来るもので、こっちから行くもんじゃない」
「生も死も、もともとそういうものだからね」
「受け身でしかいられないんでしょうか」
「その身に受けたものが、生命ってやつだから」
「そして時間の洗礼を受け、想像、妄想に自分から心を痛め、自分で自分を苦しめるのでしょうか」

「苦しんで、また楽になる時が来て、また苦しみ、その連続のうちに時間が過ぎるんだよ」
「何のために生きているんでしょうか」
「苦しむため、と言っていいんじゃないか。おあずけをくらっているんだよ、楽が来るまでの」
「期待していいんでしょうか」
「期待も何も、そうなっているんだから。何も心配することはないよ」