夫婦喧嘩

なるほど、きみは彼女がきみのようでないから彼女に不満を持ったわけだ。
しかしなかなかきみのような人間なんぞ、いないもんだぜ。
それは彼女の罪ではない。きみの罪だ、きみの想像力のなさの罪だ。
そしてその罰はチャンときみに還ってくる。きみの作った罪なのだからね!

よし想像通りの彼女だったとしても、彼女はきみではなかったのだよ。
同質の人など、この世に存在しない、一人たりとも!
だからって嘆く必要など、どこにもありゃしない──
それでも嘆きたいなら嘆くがいい。障子戸を破り! 襖を拳固で!

それらはきみの身代わりになった… 破けて、みすぼらしい!
そしてきみはそれを直そうとしない!
忘れぬよう、忘れぬよう、とっておく… 憎しみは大事だ!
何のためにかね? また「きみでない彼女」を目の当たりにした時に備えてだろう。
その時の衝撃、ショックを和らげるために。慣れておくために!
毎日見えりゃ、忘れない。風でひらひら、破れた障子。
憎しみは大切に。愛する心とおんなじだ。
裏/表の違いだけ!

彼女の貼った障子紙であり、彼女の貼った襖紙だった! それをお前は破った。
… 誰の身代わりだったのかな?