「おたがい、1つしか目を持ってないね」
「ああ、しかしボクら、ふたりでひとつなら、2つ持ってることになるな」
「でも、ボクら、おたがい、性質が違うだろ。ひとつになって、2つ目を持ったとしも、それは1つと1つだ。目は、別々だからなあ」
「1+1=2、には、なり得ないか。個と個だものねえ。しかし、目は普通、ヒトひとりの中に2つあっても、目と目の個々であるのだから、1つと1つなんじゃないか?」
「でもボクら、ひとりに1つの目しか持っていない。2つの目を持ったことがない。2つ、目があったら、どんな世界に見えるんだろうな」
「同じだろうよ。ひとりにある、目なんだから。3つあろうと4つあろうと」
「でも、5つ、6つ、もっと、もっといっぱい目があったら…いろんな物事の見方ができるようになるんじゃないかなあ」
「あってもなくても、同じだよ。だってボクら、頭の中に存在する存在なんだから」