有為者の弁

「きみと私とでは、まるっきり立場が違うようだ。そんなリンゴ農家のことなんか知らんよ。きみのまわりを見るがいい。強いものが勝ち、弱いものが淘汰される、これがずっと変わらぬ自然の理なんだよ。コメを食わなきゃ主食もないのに、そんな仕事をバカにする背広組がこの世を動かしているんだ。強者は、人間界ではいかに『人を操れるか』なんだよ。

 道徳なんかブタのエサだね。自己喪失者が、よくこれを用いる。自分がカラッポだから、戦争はいけないだの『人道』を持ち出し、自分を正義としたいのだ。そこからまた火種が起きるんだよ。道徳や人道など、何の役にも立ちはしないのだ。むしろ無い方がいい。

『道徳撲滅キャンペーン』をする気はないよ。そんなものは自然に淘汰される。人間の自然は、身勝手なものだ。それに従って、こうなっているんだから。『これが現実だ』『この世はこうなっている』とする者こそ、理想主義に生きているんだよ。人の道なんて、理想にすぎないだろうが。戦うために、人は生きているんだよ。他者より優位に立つこと。これが人間の本能だ。戦争なんて、その発露にすぎないんだよ」