希望と絶望

「絶望の中に希望があると思います」
 そう言ったら、
「そうですかねえ。ぼくには絶望の中には絶望しかないと思いますけどね」
 と言われたのだった。
 で、私は言い直した。
「希望は、今にはないんです。常にそれは未来にあるものだからです。まして今、絶望の強度が強ければ強いほど、そのぶん希望の強度も強まります。

「希望は、求めて、初めて生じるものです。希望は、求められることを望んでいるものです。求められて、初めてあるものです。
 絶望がなければ希望も生まれません。だから絶望の中に希望がある、と言いました。

「Kさんは絶望の真っ最中なのでしょう。だから希望が持てるんです。そのために今、そうやって書くこともできています。迷い、苦しいと思い自分は不幸だと思い、そこから脱け出そうとする希望が持てているんです。」

 ふうん、というふうにKさんは私を見た。
 絶望を後生大事に、胸に両腕でしっかり抱えて、手放したくないらしい。
 私は、わかってもらえなかった。
 Kさんも、わかってもらえない、と思っているらしかった。