エネルギー(1)

 そうだ、きみはエネルギーがあり過ぎるんだよ。パワー、というほどの力はないにしても、内部でエネルギーが溜まっている。だから無駄なところにエネルギーを、パワーというほどの力はないにしても、使ってしまうんだ。

 使えてしまうんだ。使えるだけの、そいつ、エナジーを、なくすようにするんだよ!

 なくすんだ、なくしてしまえばいい。少なく、微量なエナジーの貯蔵、もう、ゼロに近いほど、なくしてしまえばいい。なくしてしまうこと!

 仕事でも、調子がいいと張り切って、よけい疲れてしまうだろう? 最初から、張り切れるパワー、この場合はパワーかもしれないね、要するにエネルギーだけど、そんなもん、持ち合わせなくていいのさ! ゼロゼロ、メルトダウン、もう、なーんのパワー、エナジーも、きみの貯蔵からなくせばいいのさ!

 無駄な力が入らなくなるよ。クリアに、鮮明に世界が見えるよ。よけいなものが目に入らなくなる。そんな、入れる力もないからね!

 それが、ほんとにいいと思うよ。そしてゆっくり、ランプの油が切れていく。きみ自身の、生命のともしび自体が、ゼロになる。きみはまぼろしを見るように世界を見る。でも、それはまぼろしじゃない。きみ自身が体験し、体験する、きみだけの確固たる、きみだけの確かな世界なんだ、それが。

 そうしてうっとり、微睡むように穏やかに、まるで平和そのものみたいになって、きみは息を、最後の息をする。

 それからきみは── きみでなくなるのさ。

 きみがきみであったところのきみ、きみがきみとしていたきみが、いなくなる。

 元へ、帰るんだよ。きみが、きみでなかった最初の、最初以前の、なにものでもなかったという、あのなかへね。なかもそともない、あのもこのもないところへね。