診療内科に行けば、「軽いうつですね」と言われたのである。
7年位前と、4年位前。2回だけ行った。
軽いうつ病。
おかしな言葉。
心、形のない心に、「病」、さらに「軽い」という形容詞がついている。
病気は、医者がつくる。
つまり病名をくれるのだ。
心理学が、その発祥は精神分析医の患者に対するワクづくりであった、という話は、友達の医者から聞いたことがある。
彼が大きな病院の精神科だかに勤めていたとき、とにかく診察に訪れる人が多すぎて、その患者の顔だけを見て、「この人にはこの薬」と断を下していたそうである。
話なんか聞いているヒマがなかったというのである。
つまり「この顔」というワクがあり、そこに「この薬」を当てはめるというわけだ。
心理学なるものの成り立ちと照らし合わせたら、その発露的な話だといえる。
精神、心、気持ち、思い…
── どこにあるというのだろう?
自分の中だろう。
── 自分の中の、どこにだ?
そんなものに、よく「病名」がつけられるものだと思う。
私は、この今の社会、世の中、に生きている以上、病院に行けば誰もがうつ病なり何なりになると考えている。
そうならないほうが、むしろ、おかしくないか。
カウンセラーになりたい、と言う知人がいた。
だが私は、その資格を取ろうと躍起だった知人に、冷水を浴びせるようにこう言ってしまっていた。
「大切なのは、資格を取ることよりも、その人の痛みや気持ちに寄り添えること、わかろうとすることなんじゃない?」
そしてその知人と疎遠になってしまった。
わるいことをした、と半分本気で思った。