まったく、変わっていないことが自覚せられる。
そうか、おまえはずっとおまえだったのか、と、おのれの過去と、そして今現在に立ち返る。
ほんとに変わっていない。驚くべきほど変わってない。
言いたかったことなど、何もこんな長々と、何話にも分けて、わざわざするほどのことでもなく、ほんの数十話で終わっていたのではないか。
自分のことばかり書き続け、いたずらに時間をかけて、何を言おうとしてきたのか。
その時は、何やら必死そうだったが。こうして振り返れば、何ということはない、同じことを言いたかっただけではないか。
なるほど、「人の為」を「偽」として、おまえは自分のためにしてきたつもりだろう。
しかし、最後のところで、ほんとうに自分のためだけには、できなかったことを認めるべきだ。
人のために、なりたかったはずだ。必ず最後に残ったろう、残ったものがあったろう。
偽を、いくら拒みたいと思ったところで。
偽物は、真物から、真物は、偽物からうまれる、同じ一葉だったろう。
偽ばかりを拒むあまり、一緒に、捨てたくないものまで捨ててきたんじゃないか?
最後に残るものがあったろう。最後に残るものがあったろう。
そいつが消えちまう前に。風に吹かれて、そいつが消えちまう前に、何とかするべきだ。おまえはいつも呆然と立ち尽くしてばかりいる…
落葉か、だれかが掘り返した土か。上から来たのか下から出たのか。地面の上に何かが見える。
あれが、いつもおまえは気になっている。視界に入るからだ。
あれは、上から落ちたのか、それとも下から?
「同じことだよ」おまえが言う。
「上も下も、前後左右も。あるのは、今ここにあるということだけ。
その今も、時間が経って、そこになる。ここが、すぐ、そこになる。
こう言っているそばから、そこになる。ここは、ないのかもしれないよ。
ここは、いつまで経っても、ずっと、ないのかもしれないよ…」