まわる

 何となく、秋めいてきた。まだ、夏はくすぶっている感じがあるが。

 九月になれば、もう十月だなと思う。来年のカレンダーなんかが店先に出始めて。そう、十月に、もう来年のものが出始めるのだ。おいおい、まだ先じゃないか、と去年思った。

 どんどん早くなるな、回転が。私の頭の速度じゃ、追いつかないよ。追いつこうとも思わないけど。

 回っていない寿司を、しばらく食べていない。寿司自体を食べていない。

 サンマが高くなったとか。「昔はね…」とおじいさんが喋り始める。「サンマの刺身なんて250円位でな、そら脂がのって、うまかったで」

 いつかのおじいさんが、わたしになる。「昔はね…」

 まあ、もう孫もいるようだし、私もおじいさんなんだけどね。

「おばあさんや」私が呼びかける。「おばあさんや」

 返事がない。

 ああ、そうか。こないだ、どっかへ行ったんだっけ。

 私はどこにいるんだろう。ばあさんは、どっか行った。

 私は、どこにいるんだろう…。みんな、どこへ行ったんだろう。どこへ行くんだろう。

「回っとる」いつかの、どこかにいたおじいさんが言う。「回っとるな」