5年ぶりくらいに行った。
ともかく今日、水族館に行ったのだ。「鳥羽水族館」。
9時に家を出て、現地に着いたのは12時前。
途中、「伊勢うどん」なるものを食べたが。
水族館、魚もいっぱいいたが、人も多かった。
しかし、むかしほど、水族館の中、ガラスの向こうに悠然と泳ぐ大きなエイやアロワナとかに、さほど心を奪われなかったのは、やはり自分が歳をとったからなのか。
いや違う、今まで何回も見たことのある、「またかのガラス越し」だったからだ。
だが今回、心奪われたのは、「ダイバー」の存在である。
「マナティ」という、大きな生物のいる水槽の中に、酸素ボンベを背負った人間のダイバーがいた。
マナティと同じように、泳いでいる。ダイバーは、腰のベルトあたりから、ニンジンを取り出す。
マナティも心得たもので、ニンジンを取り出したダイバーの手へ向かってくる。
ダイバーは、マナティがニンジンを食べる様を、客によく見えるように、そういう場所を選んでニンジンを与える。
そしてダイバーは、客の反応を見ている。
水中メガネ越しだから、なんだか無感情な、無機質の目のように見える。
だが、中年とおぼしきそのダイバーは、冷静に客を、じっと見ているのだ、ぼくは何回か目が合った。
ダイバーは、水槽の中で仰向けになって、酸素ボンベのホースを口から外し、口から空気を吐き出して、水中に「輪っか」をつくったりしていた。
そしてまたダイバーは、マナティにニンジンを与えるのだ。
広い水槽の中、右の客に見せたら、左へ泳ぎ、左の客に見せるために、ニンジンを与える。
左の客に見せたら、真ん中へ。そしてまた右へ。
そして、マナティにニンジンを与える時、ダイバーの目線は、客の反応を必ず凝視しているのだ。
あの、水中メガネ越しに見える冷徹な目が、素晴らしくよかった。
水族館で、いちばん印象に残った生物であった。