自然治癒力

 思ったより回復が早い。
 こないだの月曜辺りから、右ヒジが曲がらなくなって、動かそうとすると激痛が。

 腰の次は、腕に来たのだ。
 仰向けに寝ても、横になっても痛く、眠るのも難儀した。
 箸も持てず、よし持ったとしても、口までご飯が届かない。

 三日経って、いよいよ右腕、棒のようになった。
 マスクを付けるのもおぼつかず、外に出ることもできない。
 何となく座ってネットを見たり、寝床に行ってラジオを聞いたりしていた。

 庭にあるエゴノキの花が満開で、その綺麗さにはずいぶん慰められた。
 布団の上から、ちょうど窓の向こう、青空の下に白い小さな花々が映えているのが見えて。

 四日目に、家人と一緒に整体へ。
 約一時間、「手あて」を受け、整体師いわく「三、四日経って、良くなったら、また来て下さい」

 うん?

「良くならなかったら、もう来ないでいいんですか?」
「はい、ぼくのやり方と合わなかったということなので…」

 意外な応対に、ちょっと残念に思いながら、
「そうですね、この身体がどういうふうに反応するか、わからないですもんね…」
 みたいに僕が言う。

 近くのイオンに買い物に行っていた家人が、玄関の前辺りで待っていて、一緒に帰る。
「手ごたえが無かったんだろうね」
「うん。原因がわからないからなあ」

 でも、良くなるまで通院させて、お金を払い続けさせられるより、よほど良心的だと思った。
 誠実だし、潔い。あの整体師は、できる限りのことをした。
 これで良くならなかったら、ぼくにはムリです、と言ってくれたのだ。

 帰ってきて、少し横になった。症状は変わらない。
 だが、「おい、歩けよ」と身体が訴えてきた。天気もいい。
 無性に歩きたくなった。
 銭湯へ。
 往復一時間、歩いた。

 マスクは左手だけでも付けられる。
 途中、汗がにじむけど、拭けない。
 まあ、いいや。
 銭湯でも、身体を湯に浸けるだけ。
 タオルをしぼれないから、タオルは湯上りに拭くだけ。
 今まで、身体(局部)を洗わず、湯船に入って来る人を軽蔑していたが。

 ビールを買い、つまみも適当に軽い物を買って帰宅。
 翌日、ヒジが腫れてきた。
 何もしていなくても、ピキーン!という激痛が突発的に走る。
 でも、90度くらい、曲がるようになった。
 腕も、上にあがる。

 二日目、突然やって来る激痛が、鈍痛になる。
 腫れによる、何か異物がヒジにくっ付いているような異和感も薄くなる。
 そして今日、三日目。
 右手でマウスが操作できる。
 カーソルも両手で打てる。
 右手で、歯も磨け、コップの水も飲める。

 合ったんだな、と思う。
「かめさんは、どうして医者に行かないんですか」
 みたいに、整体師から訊かれたことがある。

「自分の今までの生き方を考えた時、医者に頼るのは違うな、って。
 一人一人が自分の身体を何とかする力を持っているはずだし、それをクスリや何かで、何とかされたくないです」
 みたいに答えた。

 自然に治癒する力、きっとあるんだ、と僕は信じたい。
 べつに、整体がイイのだ、などと、薦めたくて、こんな文章を書いているのではない。

 一人一人に合った治療法があれば、それでいい。
 自分で選んだその方法で、極端な話たとえ死んでも、ああ自分が今までこうして生きてきた結果なんだな、と納得できればいい。

 とまあ、こんな感じで生きています。

(2022.5.25.)