落ち着くまでの過程(9)

 と、このように私は、電話がかかってくるたびに、胸糞を悪くしている。

 そして自分の無力さを思い知る。そこで私は、ある案を思いついた。職場には、彼女に悪い印象を持っていない人、私から見れば好意的に彼女を見ている人がある。彼女も、その人に、悪い印象をもっておらず、むしろ好意的だと思う。

 彼は既婚者であるが、いっそ愛人みたいな、そこまでしなくても、良き友達として、たとえば彼の仕事の入っていない日、私のパートナーと蜜な時間をふたりで過ごしてもらえないだろうか、と。

 一度だけ会ったことがあるが、チャンとした男である。「似ている」らしい、考え方などが。こう言っちゃ何だが、私のパートナーと「似ている」考え方をもった人、性格的にも、そういった人と出逢う機会は、なかなかないと思う。たぶん、きっと、彼女の人生で、貴重な人になるのではないかと私は思う。

 そして彼女が充実した、素敵な時間を過ごしてくれれば、私も嬉しい。以前はちょっと嫉妬したが、考えてみれば私にそんな、嫉妬するような権利はないというか、そんな人間ではない、と思えている今日この頃である。

 とにかく彼女に、幸せな時間が、なるべくあってくれたらいいのだ。本気でこれは、そう思う。

 話が、いささか混沌としてきたが、ともかく昨日も、職場から「意地悪ばあさん」の電話があり、私は胸糞悪くなり(時には手が震える)、家を逃げるように出、義務のようにパチンコ屋に向かったのだった。

 帰って来ても私は笑えず、殺気立ったオーラでも出ていたか、彼女と何の会話もせず、夜になり── ひとりになった私は、布団の上で自殺のことばかり考えていた。