山椒の葉と、虫と

 今年も山椒の葉が淡緑に繁み、風に斜めになりながら鉢の中で持ちこたえている。

 そして今年も、その葉の上に、1匹、2匹と、黒い小さな細長のものが、戸惑っているように居た。
 アゲハチョウの幼児。

 彼らを見つけて、1週間が経つ。いまや彼らは、しっかり「トリの糞」に擬似た形となり、その天敵から喰われる運命を逃れ、逃れた先からの運命を、彼らの道程として着実に進んでいる。

 よく昆虫図鑑の表紙を飾っていた、頭でっかちで、「眼」を模倣したふたつのそれがあり、山椒の葉と同じ綺麗な緑色へ進んだ後、不意にサナギになって閉じ籠り、それからまったく別の生きもののように、あのアゲハになるという道程。

 今年のアゲハの幼児たちは、今年は5兄弟である。
 サナギになる時は、なぜか別の場所へ全速力で歩いて行き(その速さは物凄いものらしい)、そこで閉じ籠るという。

 いつかは、うちのネコの福が、それを見つけてチョイチョイしていた。
 確かに、山椒の鉢から4mほど離れた、ベランダの欄干の網のところで、サナギになっていた。

 山椒の葉は、彼らによって毎年食べ尽くされる。
 が、毎年、自然みたいに枝から、もりもりと葉を生み出している。
 そしてまたもりもり食われる、を繰り返している。